2014年7月2日水曜日

スーパーあぶない刑事39話

  『潜入』



港署に一本のタレ込み電話が入った。





吉井浩一「ハイ、港署捜査課」
男(声)『今夜、クローバーで薬の取引がある、そこで覚醒剤や麻薬が若者をターゲットに売られるそうだ、潰すなら今夜しかない』





吉井がオンフックにしてみんなにも聴かせた。






吉井浩一「正確な時間は、どんな奴らが取り引きするんだ?」
男(声)『時間は今夜六時、うわさではヤクザと暴走族らしい、いいかクローバーだ』





と、言って電話が切れた。





田中文男「署長、信用しますか?」
大下真琴「声を籠らせてしゃべっていたけど恐らく自声だろう、ということはすぐ近くに取引の予定を相談する人物がいたのだろう」
徳川治樹「よし、テープでもう一度聴いてみよう」






みんなは集まってテープを聴いた。






テープ音『今夜、クローバーで薬の取引がある、そこで・・・』
町田透「まるで近くで様子を伺っているみたいな話し方ですね」
大下勇次「待て、何か聴こえる、パパ少し巻き戻して」
吉井浩一「ああ、分かった」







吉井は巻き戻してもう一度再生した。
すると・・・






大下勇次「ホラ、しゃべってる男の奥で数人の話し声がしているだろう」
武田英彦「確かにもう二人くらいの声がするな」
鷹山敏樹「そうかこれは今、リアルタイムで相談しているところを聴きながら話していたんだ」





そうだとすると電話の主に危険が迫っているということになる。






宮本謙「署長、すぐにみんなを連れて向かって下さい」
大下真琴「ハイ、みんな行くよ」
全員『オッス!』






捜査官たちはクローバーへ急行しました。






大下真琴「第一目的は電話の主を保護すること、薬とヤクザは二の次だ、ここからは潜入捜査だ俺と治樹・慎太郎・勇次・敏樹・亮・実・拓で店に入る、他は店の前と裏で張り込め」
青木順子「了解、気をつけて下さいね」
本城慎太郎「亮、行くよ」
藤村亮「はい」





店に入って真琴たちもバラバラに分かれました。
本城と藤村ペア・大下と鷹山ペア・原田実と村木拓ペア・そして大下真琴と徳川治樹のペアです。





大下真琴「ねぇ、ここって高級クラブだよね、こんな所で取引するかな?」
徳川治樹「意外と穴場だったりするんだよ、でも俺たちよく入れたよな」






しかし、さすが高級クラブだけあって下手な動きは見せなかった。






本城慎太郎「タレ込んで来た男らしき奴はいるか?」
原田実「目立たないようにしてるはずですよね」






そこへ真琴の携帯に萩原から連絡があった。





萩原秋夫(声)『署長、今、大岡さんたちと日比谷のラジオスタジオシティにいる』
大下真琴「ラジオスタジオシティ?なんでそんな所に?」
萩原秋夫「怪しい男が三人ほどいるんだ」
徳川治樹「真琴、こっちにも入って来たぞ」
大下真琴「ごめん、一端切る」





プツッと切った。





萩原秋夫「あっ!切っちまいやがった、吉井さんどうする?」
吉井浩一「とにかく様子を見よう、風間さん」
風間明「すぐにドンパチが始まるとは限らない、少し様子を見よう」






一方、真琴たちは本城と藤村が店員になりすまして客を案内していた。






藤村亮「いらっしゃいませ、コートをお預かりします」
女性A「ありがとう」






真琴と治樹は親子という設定で振舞っていた。





大下真琴「お父さん、あんまり飲みすぎるとまたお母さんに怒られちゃうよ」
徳川治樹「大丈夫だよ、この程度じゃ酔わないから」
大下真琴「どうだか・・・?」
徳川治樹「ちょっと待て、俺ってダメオヤジって設定なの?」
大下真琴「ごめん、嫌だった?」
徳川治樹「ううん、いいよ、面白そうだからやるよ」
大下真琴「うん、じゃ続けるよ、コラ~ダメ!」
徳川治樹「え~飲ませてよぉ」
大下真琴「もぉ~しょうがないなぁ、一杯だけだよ」
徳川治樹「ワ~イ!パパ嬉しい♪」






他の人はイヤホン越しに聴いていた。






原田実「あの二人、楽しんでますね」
村木拓「また、親子に見えるもんな」
青木順子「署長、2人組の男が裏口から入って行きました」
大下真琴『了解』





カウンター席を見るとそれらしき2人組が姿を現した。
そしてテーブル席の方に振り返って誰かを探していた。





徳川治樹「どうやらこの中に奴らの仲間がいるみたいだな」
大下真琴「電話して来た人、どこにいるんだろう?」
本城慎太郎「接触して来ないな」






その頃、ラジオシティでは五人組の男が男性を縄で縛りつけにして暴行していた。





大岡忠利「ひょっとして彼が通報して来た人なんじゃ・・・」
風間明「助けましょう」






風間・大岡・遠山・吉井・田中・谷村・木葉・松田・海堂・鈴村・大月・倉田・桐原・十文字・吉田の16人は役割を決めて行動を起こした。
木葉と桐原で男性を救出することに・・・






ヤクザC「おっなんだてめえ💢」





“ドカ⚡️”





ヤクザC「イタァ!この野郎💢」
桐原早希「この人、返してもらうわよ」
ヤクザB「クソ!仲間がいたのか!?」
木葉聡「仲間は俺たちだけじゃないぞ」







木葉の言葉にヤクザたちは辺りを見回した。






風間明「しっかり、あなたが通報して来た人ですね?」
男性T「はい、助けに来てくれると信じてました」






大岡たちが五人のヤクザを捕まえで手錠を掛けました。





遠山金之助「よし、こっちは片付いた」





五人組のヤクザたちは木葉たち忍び組に任せて風間たちは通報者=目撃者の男性と共に
真琴たちがいるクローバーへ向かいました。





村木拓「遅い!もう来てもいい頃なのに・・・」





そこへ吉井から無線で連絡が入った。






吉井浩一『吉井だ、今、目撃者を助け出してそっちへ向かっている』
原田実「それどういうことです?」
風間明『ヤクザに捕まって暴行されていたんだ、通報した後捕まってしまったんだ』
大下勇次「目撃者を消そうとしたんだな、こっちはまだ動きがありません」
吉井浩一『了解、もう少しで着きますから』
鷹山敏樹「いいよ、ゆっくりで目撃者が来ない限り奴らは動かないはずだから」
吉井浩一『だろうな、でもなるべく急ぐから』
鷹山敏樹「了解」







真琴はサイダーを飲んだ。
カウンター、出入り口、テーブル席と見回す。





鷹山敏樹「カウンターに3人、出入り口に4人、各テーブルに2人ずつ全部で17人か」
大下勇次「さっき3人ほど増えたからな」
大下真琴「このフロアはね、上にもまだいる、あと6~7人はいると思わないと」
徳川治樹「そうだな、本城・藤村、上の階に行けないか?」
本城慎太郎「やってみる、亮」





本城と藤村はそっと二階に上った。
二階は冷蔵庫がズラリと並んでいました。





藤村亮「署長、デカイ冷蔵庫がズラ~と並んでるんすよ」
大下真琴「冷蔵庫?ズラ~と・・・そういうことか2人とも一つ開けてみてくれ」
藤村亮「本城さん開けてみろだって」
本城慎太郎「OK、お前見張っていろよ」





亮はうなずきで答えた。
本城は冷蔵庫の取っ手に手を伸ばした。
“カパッ”と開らくと黒いビニール袋が重なった状態で入っていた。
その時、奥から話声が近づいて来たので2人は冷蔵庫の裏に隠れた。





ヤクザA「な~に在庫はまだこの中にあるし、しかも大量にここは関係者以外は立ち入り禁止だからな、ここで取り引きしているなんて誰も分からねぇよ」
売人U「けどよくラジオシティからこんな高い店に運び込めたよね」
ヤクザA「フッ頭の出来が違うからな、サツにもバレテいない」






(もう遅いよ)と本城と藤村が思いながら息を殺して会話を聴いていた。
もちろんテープに録音している。
奥のドアが閉まり辺りが静かになると本城と藤村は再び冷蔵庫を開けて使いきりカメラで証拠写真を撮った。
袋を破いて何の薬か確かめるため透明のビニール袋に粉を入れた。
ジップロックをして二階を跡にした。





藤村亮「署長、この粉調べられますか?」
大下真琴「ここで?実験道具はないの、仕方ない、慎太郎、安田さんか河合さんを呼んで調べてもらって」
本城慎太郎「分かった、一端外に出る、亮」
藤村亮「ハイハイ」





本城と藤村は気づかれないように外に出て行きました。
本城が携帯で署に連絡しました。






宮本謙「よし、分かった河合さんが行ってくれるから待っててくれ」
本城慎太郎(声)『本城了解』







河合は助手の南原を連れて来ました。
南原が運転していました。
車が止まると河合が大きなケースを持って降りて来ました。






河合紘司「待たせたね、その粉を調べればいいんだね?」
本城慎太郎「すいません、こんな所でお願いして」
河合紘司「薬物所持の現行犯で逮捕できるかもしれないからな、署長たちは?」
藤村亮「これの結果を待ってます、中にみんないるんですよ」






河合は銀のスプーンで粉をすくいフラスコに入れてその中に透明の液体を注入した。






河合紘司「赤に変わった、ということは覚醒剤だ」
本城慎太郎「ありがとう、真琴、粉の正体は覚醒剤だ、押収できる」
大下真琴『了解、河合さんにありがとうっと伝えて』
本城慎太郎「ああ、俺たちもそっち戻る」





と言ってトランシーバーを切った。





河合紘司「じゃ俺は戻る、頑張れよ」
藤村亮「アザース!」





河合は帰って行きました。
本城たちが店の中に戻るところを監視カメラで見ている者がいた。






ヤクザD「変な2人組が入って来たぞ」
売人「サツか?」
ヤクザD「分からねぇ、ブルーのジャケットの男と背広の男だ」





しかし彼らはまだ真琴たちには気づいていない。
店内にチンピラ風の男たちが現れた。





大下真琴「あら、バレタみたい」






店員の一人が本城と藤村に声を掛けて来た。





店員A「お客様、奥の部屋へどうぞ」
本城慎太郎「ふ~ん、そうOK」





案内されるまま奥へ入って行きました。
真琴と治樹も動いた。
勇次たちに目で合図を送り気づかれないよう着いて行く。
本城と藤村は広い部屋に連れて行かれると数十人の男らに囲まれた。





ヤクザD「よく二人だけで入って来たね、その度胸は褒めてやるよ」






真ん中の男が合図を送るとみんな拳銃を抜いた。
本城と藤村は背中合わせに立って冷や汗を流した。
するとそこへ援軍が駆けつけて発砲した。





“バン⚡️バン⚡️バン⚡️”





大下真琴「もうちょっと時間稼いでくんなきゃ、まっしゃ~ねぇか、港暑だ全員逮捕する」





店内の方でも銃声がしています。





藤村亮「署長、ナイスタイミングかっこいい♪」
大下真琴「予定よりちぃ~と早いが・・・」
徳川治樹「まぁまぁ証拠も手に入れたし上出来じゃない」
大下真琴「だな」






店の方ではお客の悲鳴が飛び交っていた。





鷹山敏樹「勇次、本城さんと亮、平気かな?」
大下勇次「真琴と治樹がついているから平気だよ」
町田透「こっちも充分ヤバイですよ」






奥でも銃声がしています。





徳川治樹「真琴、プランBで行こう」
大下真琴「俺も同じことを考えていた」
本城慎太郎「賛成、向こうへ回る、亮」
藤村亮「おっしゃ」





そこへ宗明と大岡たちが駆けつけて来ました。





徳川宗明「お~い、生きているかい?」
大岡忠利「署長、治樹さん本城・藤村無事ですか?」
大下真琴「みんなおるよ、助かったぜ、一気に行くぞ」
ヤクザC「チッ、まだ仲間がいたのか?」
風間明「港暑のデカみんな揃ってるよ」
萩原秋夫「これで逆転したな下にも応援が来ている」





ドンパチが始まった。
真琴は首をかしげている。






徳川宗明「署長、どうしたの?」
大下真琴「命中率が悪い」
徳川宗明「当たっているじゃん」
大下真琴「う~ん、納得が行かない」
徳川治樹「署に戻ったら、練習するといい」
大下真琴「そうする」





大岡たちも目を丸くしていた。
負傷した奴を吉井たちが手錠を掛けて行った。





大下真琴「パパ足りないでしょ、これ使って」





と、布袋を投げ渡した。





吉井浩一「助かった、これで足ります」
田中文男「よし、ジャンジャン掛けて行こう」
本城慎太郎「しぶとい奴らだ」
青木順子「いえ、人数が多いからですよ」





青木に突っ込まれた。





本城慎太郎「それもそうね」
大下真琴「あ~めんどくせぇ💢」





銃を右手に持ちながら左手でバッグから手榴弾を取り出した。





大下勇次「ちょちょちょ!待て、ここでピン抜くなよ」
大下真琴「階段の方に避難しろ、急げ!」




鷹山たちは素早く移動した。





徳川吉之「あいつがめんどくせぇとキレルと何するか分からんな」
遠山金之助「でも確かに敵の数も多いですからね、気持ちは分かります」






真琴はピンを抜いて投げた。





鷹山敏樹「伏せろ!」





タカの合図でみんな床に伏せた。




“ドガ~ン💥”





『うおおっ!』




煙の中で数人が倒れて行くのが見えた。





大下真琴「もう一個投げていい?」
徳川宗明「いいんじゃない、やっちゃえば・・・」





もう一つピンを抜いて投げました。





“ドガァ~ン💥ズドン‼️”





「うわぁ」





おかげで敵を半分以上減らせました。





徳川宗明「お~やったやった、あともうひと踏ん張りだ」






真琴は右手に拳銃を持ち替えて発砲した。
真琴に続いて大下・本城たちも再び発砲し始めた。






大下真琴「あ゙~命中率が悪くてイライラする💢」
町田透「先輩、署長はなぜあんなイラついているの?」
大下勇次「自分の銃の腕が気に入らないらしい」
町田透「え~そんな言うほど悪くないじゃない」
徳川治樹「ところが本人は不満らしい」





吉之も首をかしげている。
その後も署に戻るまで真琴のイライラが続いた。





近藤卓造「署長、お帰りなさい、ご苦労様です」
大下真琴「射撃場にいる」
近藤卓造「はぁ・・・署長、なにかあったのか?」
徳川宗明「まぁちょっと・・・ハルさん行こう行こう」





治樹と宗明は副署長に会釈をして地下の射撃場へ降りて行きました。
真琴は残りの弾を的に向けて撃った。





“バン⚡️バン⚡️バン⚡️”





徳川治樹「正確な射撃だ」
徳川宗明「ああ、一片の迷いも感じない」
大下真琴「隠れてないで出て来たらどうです?」





弾を入れ替えながら真琴が言った。





徳川宗明「いい腕してるじゃない」
大下真琴「ありがとうございます、二人も一緒にやりませんか?」
徳川宗明「おぅ、つき合うぜ、治さんもどうだい?」
徳川治樹「うん、やろうかな」





二人は真琴の両隣りに着いて射撃を始めた。





徳川宗明「すごいじゃねぇか、全部真ん中に当たってるぜ」
大下真琴「二人ともここに来て射撃の練習したことあります?」
徳川治樹「二、三回くらいやった気がするけど、久しぶりだな」
徳川宗明「一緒にやるのは初めてだよな」
大下真琴「そうですね」






真琴は捜査の時以外はみんなに敬語を使うようにしています。





大下真琴「さて、何発当たってるかな~?」





的を手前まで動かして見ました。
真琴は左右の胸に五発ずつ当たっていました。
治樹も宗明も胸を中心に弾が当たっていた。





徳川宗明「どれどれ、おっすごいじゃない、ハルさんこれ見てみなよ」






治樹も覗いて見ました。





徳川治樹「これだけ撃てれば上出来だ」
大下真琴「すっきりしました」
徳川宗明「いい顔になってるよ」






治樹と宗明と笑い合っている真琴の様子を陰から見て勇次は安心した顔で見つめていた。
治樹と目が合うと勇次が二人に向けて頭を下げた。
それを見て治樹もうなずきで応えました。




つづく。

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